5時21分のマダガスカル

先日目覚まし時計を買った。アラーム機能が壊れてしまった目覚まし時計はいくつも持っているのだが、それらは電池を入れ替えてもアラームが鳴らない。だから諦めて暫くは携帯電話のアラームを代わりに使っていたのだがなんとなくずっと気持ちが悪かった。つくづく自分はアナログ人間なんだと思う。
腕時計の電池が無くなっていたこともあり、鳥栖駅近くの時計屋さんに行くことにした。文字盤の大きなこの腕時計は夏の間中5時21分で台所に置かれたままになっていた。
5時21分...夕方なら一番忙しい時間。時間よ、このまま止まっておくれ!私の心の叫び。そんなふうにも思えてくる。はたまた100年もの間お城の中の全てが眠りについたいばらひめのお話までもが思い浮かぶ。
まあでも、そんなことも言ってはおられない。気持ちを現実に戻して私は時計屋さんに入って行った。

店内には先客が居た。スーツ姿の男性。偶然にも知り合いだった。
私の車のこと全般をお願いしている鳥栖の車屋さんの社長さんだった。もともと父が大変この車屋さんを気に入っている為私もお願いするようになったのだが、これまで社長さんと直接話をする機会などはなかった。社長さんは眼鏡の修理待ちで私は腕時計の電池交換待ち。15分程の時間だったが、この社長さんから意外な話が聞けて楽しかった。
最近家族旅行でマダガスカルに行かれたそうだ。この方からマダガスカルという普段あまり耳にしない国名を聞いたことにとても驚いた。しかも現地で記念に砂を集めて日本に持ち帰ろうとされたそうだが、結局持ち帰ることはできなかったとの話。マダガスカルでの旅話をとても楽しそうにされるK 社長の顔がいつもとは違ってリラックスした表情に見えた。そしてこの方と車以外のことでおしゃべりができたこともうれしかった。
私の腕時計は再び正確な時間を刻み始めたけれど、これから5時21分になるとマダガスカルの思い出話がK 社長のあの表情とともに甦ってきそうだ。
さて、肝心な目覚まし時計はというとグリーンと白の鳩時計ふうのものを選んだ。川のせせらぎと共にカッコウが朝の始まりを知らせてくれる。これから起こされるのも悪くないと思える穏やかな朝の始まりが迎えられるかもしれない。

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