いつもと違う風景

「終点までお願いします。」
7時19分。私はバスの運転手さんに一言伝えて娘を見送った。
最寄りのバス停から終点まで10分ほど。娘はこれから毎日路線バスに揺られて山に上がって行く。私と2年余りを車で通った道。川沿いの狭い1本道。数日前から眼鏡橋の辺りから桜は散っており新緑が息をのむほどに美しい。
彼女にとってバスで通るのは慣れ親しんだ道で馴染みのある風景であろうが、バスの車内に座って眺めるとそれらはまた違って見えるのではないか。いずれにしても一人でバスに乗って脊振まで上がって行くことを心待ちにしていた娘にとっては人生初の大冒険となったにちがいない。一人でちょこんと座って満面の笑みを浮かべながら私に手を振ってくれた。
朝の送迎をバスの運転手さんにお願いできるのは日々の大仕事の負担が軽くなりとても有難いことである。
しかも、子どもがほとんどいない地区にもかかわらずバス停の近くに区長さんの奥さんが見守り隊で毎朝立って下さっている。とても心強い。子どもの成長と共に地域の繋がりをより強く意識するようになってきた。
ああ、それにしても、何かこう一大任務をひとつやり遂げたような達成感があり私はバス停からの帰り道傘をさして空に向かっているようだった。
明日はいよいよ入学式。

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