バッタが教えてくれたこと

土に還る

冬空の下、ひとつのちいさな命が土に還った
彼は 自らの生を全うし静かに息をひきとった

夏の終わりに植えられたマリーゴールド
彼はその花々の邸宅を己の棲家と定めた
人間の時計では計ることのできないリズムで自分の家を移動していた
葉にしっかりとしがみつき彼は何を思っていたのだろうか

一寸ばかりの草色のバッタ
この秋を共に過ごした隣人
秋空の下 移ろいゆく光を共に感じた小さき命

彼の死は思いがけずにやってきて
私は当惑した

あなたが死ぬなど思ってもみなかった
私は三センチばかりの体を手のひらにのせ 冬の空気を味わった

彼の死について私はしばらく考えたが答えは出ないままだった

しばらくして年の瀬をむかえ 私はあのバッタに呼ばれたかのように
近所にある川沿いの公園に来ていた

すっかり葉を落とした木々たちは 全ての肌を露出しさっぱりとしていた
代わりに地面はふかふかのじゅうたんが敷かれ 豊潤であった

我が衣を全て土に還す木々たち
その潔さ
まさに美しさの根源ではないか

全ては土に還る 植物 生物 そして人も
全てが繋がった
あのバッタの死が意味していたこと
そして彼の伝えたかったことが

土に還るまで みなで 彼と共に空を 空気を においを感じていようではないか
いずれ もう誰も恐れるものはいなくなる

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