山には 木があって 森がある

水があって 川がある

そして 山には 思い出があって あの時の風景がある

ふと見る景色の中には いつも 山がある

 

少し前まで 私の見上げた先にはいつも 耳納(みのう)の山が見えていた

それは 子どもたちが せっせと 砂場でお山を作って出来上がった裏山のようだった

庭のむこう側にある 畑から石段を登っていけばすぐのところに とっぺんが見えるような山だった

耳納の山は 人と山が近くに感じられる山だった

 

いま ふと見上げるずっと先には 背振の山々が広がっている

それは 子どもたちの作った砂山のようではなく

庭のむこう側からすぐのところに見えるような山でもない

にこやかに 手を差し伸べてくれるような 山でももちろんない

けれども 毎朝起きたら 私が必ず目にする風景の一部なのである

 

この山は 毎朝静かに 「おはよう」とだけ言ってくれる

私も 「おはよう」とだけ言って返し その日がまた始まる

 

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